STARTUP DESIGN

新事業のデザインやブランディングを中心に、クリエイティブ全般について記録するアートディレクターのメモ帳。

99designsのクラウドソーシングサービスから考える、デザイナーのキャリアについて。

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世界最大のグラフィックデザイン

クラウドソーシングサービスである99designs

http://99designs.jp/

すごく簡単に言うと、グラフィクデザインのお仕事発注サイト。
という説明になるのでしょうか。

幸運にも、CEOのPatrick Llewellyn氏の講演を聞くことができました。

そのレポートも兼ねて、このサービスや、

デザイナーという職種について思うことを書いてみます。

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↑CEOのPatrick Llewellyn氏は超イケメンでした。

 

●規模が大きい。

日本でも似たサービスはあるのですが、

この99designsはやっぱり規模が大きいです。

登録者数は100万人で、日本国内のサービスの倍くらい。

デザイナーの数だけで考えると、断然多いのだと思います。

2秒に1つ、平均単価6万円くらいで

デザインがアウトプットされているとのこと。

もちろん、365日止まることはありません。

さながらグラフィックデザインがベルトコンベアーで

大量生産されているような状態ですね。

う~ん、驚愕!

 

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↑デザイナーのポートフォリオがたくさん。 

 

 

●世界進出がアグレッシブ。

次々と世界中のデザイン会社を買収したりして、

この4年の間に、7つの言語圏への進出を果たしているそうです。

日本語にもすでに対応しているとのこと。

そんななかで、進出する国を選ぶ基準の話がまた興味深かったです。

デザインのマーケットが大きい国を選ぶ。というのは当然なのですが、

クラウドソーシングの競合が多すぎるとパイの取り合いになってしまう。

逆に少なくても、こういったサービスでデザインをする

という習慣が根付いていないため、うまくいかないんだとか。

その微妙なバランスをみながら進出する国を精査するしているようです。

う~ん、納得!

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 ↑海外進出の軌跡が語られました。

 

ローカライズも徹底。

あたかも、もともと日本にあったかのようなトンマナで

日本語用サイトが作られています。

また、ドメインも.jpにするなど、かなり

細かいところまで気を使っているのが伝わりました。

電話対応にも、力を入れているようです。

クリエイティブのローカライズは難しい分野だと

よく言われますが、こういうところに目を配っているから、

海外進出がスムーズに進むのですね。

う~ん、繊細!

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 ↑ちゃんと日本のサービスにみえますよね。

 

まとめ

こういったサービスの台頭は

デザイナーにとっては、

地方にいてもデザインを受注できるとか、

リゾートの浜辺でビール飲みながら仕事できるとか、

自由な生き方を得られるという利点があると思います。

が、同時に、フリーランス

世界中のデザイナーたちとのスキルと価格の競争に

常に晒されることになる。とも言えます。

 

クラウドソーシングが勢いを増していくことは、

時代の流れですし、恩恵もたくさんあるので、

僕は良いことなのではないかと思っています。

 

ただ、一方でこの流れが加速していくのであれば、

デザイナーの価値は、カッコイイデザインを作れれば良い。

というわけではなくなっていくのではないかと感じました。

個人的には、これからクリエイターに求められていくスキルは、

大きくわけて2方向あるのではないかと思います。

 

1つめは、

100万人のデザイナーと横並びにされても、

競合にならないくらいの

超強烈な個性か専門性を持っている人になるということ。

 

2つめは、

クライアントのビジネスをスケールアップさせるための

マーケティングやPR、プロダクト、ブランド作りなどを、

総合しながら判断し、それを直感的なビジュアルに定着できる人材。

つまりクリエイティブディレクション力のある人になるということ。

  

言い換えれば、

スペシャリストかジェネラリストのいずれかに振り切らないと、

価格競争というテーブルの上で、

世界を相手に戦いを繰り返すことになる。

ということなのかもしれません。


もっとも、そんなことを書いている自分も、

デザインもクリエイティブディレクション

まだまだ半人前なのではありますがw。

ただ、こういった世界的な環境の変化を踏まえて、

我々デザイナーはスキルを伸ばすベクトルをどこに設定するのか。

ということを見据えながら、自分のキャリアを考えていく

必要があるのではないかと感じました。

 

う~ん、もっと頑張らなきゃ!

 


99designs.jp

渋谷の深夜まで本が楽しめるBAR「森の図書室」ができるまでの写真まとめ <森の図書室 舞台の裏日記#3>

渋谷にオープンする本が借りれるバー「森の図書室」の美術担当 村越です。

この図書室は、6月16日から

クラウドファンディングに参加いただいたパトロン様限定の営業を開始し、

7月1日から一般のお客様にもご利用いただけます。

場所は道玄坂沿い、徒歩6、7分ほどでしょうか。

 

 

今回は文章少なめにしつつ、

森の図書室プロジェクトが発足してから

プレオープニングパーティにいたるまでの写真を、

ひらすらアップしたいと思います。

 

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物件の工事開始。ボロボロ。

 

  

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工事中の森の図書室にてミーティング。お尻が砂だらけになりました。 

 

 

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そうこうしてる間に、ロゴが完成! 

 

 

 

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キャンプファイヤーにて、クラウドファンディング始動。

あっというまにパトロン様が増えていきます。

 

 

 

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床を貼りはじめました。廃材を再利用しています。

 

   

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つづいて本棚の工事。どんどん壁が棚になっていきます。

 

 

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そんな中、椅子が到着。いい感じです。

 

 

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本に押す用のハンコが仕上がりました。1万冊くらい、ひたすら押していきます。

 

 

 

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コースターもオリジナルに。オススメの本の感想文が書いてあって、
お酒を頼むたびに、新しい本に出会えるしくみです。

 

  

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 名刺&ショップカード。しおりとしても使えます。

 

 

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厨房も完成。カウンターもかなりいい感じです。

 

   

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お酒もそろいました。いっきにバーらしくなりますね。

 

 

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プロジェクターと音響を導入!

 

f:id:yoheimurakoshi:20140613112543p:plainそんななか、クラウドファンディングパトロン数、日本記録更新! 

感謝!感謝です!

 

 

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休日も作業。メンバーとの一コマ。

 

 

 

本も、お酒も、音響も、映像も、、、

必要なものはすべて揃えました。あとは仕上げるだけ!

ラストスパートです!

 

 

 

いよいよ完成へ。

 

 

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感無量です。

プロジェクトを始めてはや3ヶ月。

苦労したかいがありました。

スタートアップのデザインは、

この瞬間を味わいたくて

やっているといってもいいかもしれません。

 

そして、プレオープニングパーティの日がやってきました。

パトロンとなっていただいたお客様をお招きする日です。

 

 

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 メンバーは掃除や準備でてんやわんや。

 

 


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この日、森の図書室の看板に、はじめてあかりが灯りました。

お客様を迎える準備は万端です。

 

 

 

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いよいよ、開店! 

  

 

 

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パーティはあっというまに満員状態になりましたが、

無事乗り切ることができました!

スタッフのみなさま、おつかれさまでした!

 

 

 

まとめ

 

めちゃくちゃ大変で、

めちゃくちゃ楽しかった、

森の図書室の立ち上げも、

めでたく完了。


たくさんのパトロンの方々をはじめとして、

ボランティアとして参加してくれた方、

本を寄贈してくれた方、

取材してくれた方、

アルバイトスタッフ、

応援してくれたすべての方々に、

感謝でいっぱいです。

 

とはいっても、まだお店は走りはじめたばかり。

森くんの挑戦はまだまだこれからです。

渋谷に、本と人が繋がる場所を。

それを追求しつづけ、守りつづけること。

それができて、はじめてここは、

本当に意味のある場になるのだと思います。

 

森の図書室 舞台の裏日記は、

これで最終回になりますが、

今後とも、森くんを応援してやってください。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

 

 

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 http://morinotosyoshitsu.com

 

 

 

 

 

プロジェクトがバイラルするまで。「森の図書室」の場合。<森の図書室 舞台の裏日記#2>

 

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渋谷に6月オープン予定の「森の図書室」。

このお店は、会員登録すれば、本が自由に借りられて、

夜1時までお酒をのみながらゆっくり読書ができる。

いわゆるブックバーに近いものです。

 

発起人の森俊介くんにすっかり乗せられた僕は、

このお店の立ち上げのアートワークやディレクションをしているのですが・・

うれしいことに、このプロジェクトが猛烈な勢いで、ネット上で拡散しはじめているのです!

 

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http://morinotosyoshitsu.com/

 

ティザーサイトを公開してからわずか1ヶ月の間に、

把握しているだけで、

掲載されたWEBメディアは50以上。

雑誌、ラジオ、TVの取材は40件以上。

FBページのいいね数も一気に4200を獲得。

正直、こんなにとりあげていただけるとは

まったく思っていませんでした。

どうして、こんなに大きなバイラル現象がおきたのか。

後学のために、自分なりにまとめてみることにしました。

 

 

1:クラウドファンディングバイラルした。

 

考えられる一番大きな要因は、クラウドファンディングサービスの、

「CAMPFIRE」に参加したこと。

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http://camp-fire.jp/projects/view/997

 

クラウドファンディングとは、本来、

不特定多数の方からお金を集めるためのものです。

しかし、僕たちは、お金を支援していただくことよりも、

多くの人にこの活動のことを知ってもらうことに重きを置いていました。

そこで、出資者の方に対し、

徹底してハードルの低いプランで投稿したことろ、

多くの方々に支持していただくことができました。

 

2014年5月23日現在で、

この投稿に対してのいいね数は6200を超えています。

出資額は570万円以上にものぼり、

出資していただいた方の人数は860人。

日本のクラウドファンディングにおける

過去最高のパトロン数は1200人とのことなので、

ひょっとしたら・・ですが、

日本記録更新!

なんてこともあり得るかもしれないのです。

 

いいね!を押してもらったり、出資してもらうことで、

どんどん SNS上での拡散が発生。

本来、開店前のお店というのは、

こういった情報を拡散できる装置を持っていないのが普通だと思いますが、

森の図書室はクラウドファンディングに参加することで、

多くの人にこのプロジェクトを

知ってもらう導線を獲得することができたのです。

 

 

2:選んだ単語がバズりやすいものでできていた。

 

「渋谷」「夜」「酒」そして「図書室」。

これらは、この空間の独自性を出すために、

打ち出していたワードなのですが、

僕はここに並んでいる単語が、

拡散に大きく貢献していると考えています。

 

バイラルするキーワードの作り方には、

人によっていろんな方法論があると思いますが、

僕は「単語の組み合わせにインパクトがあるかどうか。」

ということが重要だと思っています。

 

「渋谷」「夜」「酒」というちょっとワルそうな言葉が、

「図書室」という真逆の優等生ワードと組合わさることで

妙にインパクトを発し始め、新しい響きの言葉に聞こえてきます。

「渋谷の図書室」「夜の図書室」「酒が飲める図書室」・・

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これらの単語が、ネット上でユーザーさんの手によって

うまい具合にミックスされていったことによって

話題にしたくなる、ひっかかりのある ワードとして

機能していったのではないかと思います。

 

仮に僕たちが「図書室」を「ブックバー」と表現したとしたら、

「渋谷」も「夜」も「酒」という言葉も、インパクトを失っていたのではないでしょうか。

「渋谷の酒が飲める夜のブックバー。」

意味自体はそんなに変わらないとは思うのですが、

もしも後者の言葉を選んでいたら、

今のように話題にしていただくことはもっと少なかったかもしれません。

 

 

 

3:インフルエンサーの人たちに想いが届いた。

 

ブログを書いていて実感することは、

インフルエンサーの方が2人反応してくれれば、

その記事はバイラルし始める、ということです。

今回の場合ありがたいことに、

初期の段階で、非常に影響力の高いインフルエンサーの方が

2、3人、プロジェクトのことをツイッター上で拾ってくれました。

これが明らかに呼び水になりました。

 

インフルエンサーのつぶやきやシェアがトリガーとなり、初速のPVが生まれる。

そのPVを察知してブログニュースメディアである、グノシーや、はてぶに掲載され、

さらにPVがあがっていくと、ヤフトピなどの超メジャーなWEBメディアがとりあげる。

それが最終的に、雑誌やラジオ、TVへと波及していく。

こういった連鎖が、瞬く間に広がっていくのを、

このプロジェクトで目の当たりにすることができました。

非常に貴重な経験だったと思います。

 

 

4:森くんの人柄。

 

横で見ていて心配になるくらい、彼は儲けることに執着がありません。

純粋に「読書」という文化を通して、

自分がずっと作りたかったもの、

みんなが欲しいであろうものを追い求めています。

そのため、彼が発信している内容は、

いやらしさも下心も感じることがなくダイレクトに伝わってくるように思えます。

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もちろん、森くんの気持ちがPVにどう影響しているかなんて、

数値化も計測もできないのですが、

彼の想いの強さが共感を生み、

バイラルを加速させている大きな要因になっているのではないかと

僕は考えています。

 

 

まとめ

 

今まで8年くらい広告を作ってきましたが、

恥ずかしながら、 広告費を一切つかわずに、

ここまで大きなバズを生んだことはありませんでした。

 

・ユーザーさんが本当に求めているものを、

・導線をきちんと整理した状態で、

・誰でも参加してもらえるハードルで

・想いを嘘なく真摯に発信する。

 

こういったことが守られていれば、

プロジェクトは大きな推進力を得ることができるのだと、

改めて思い知らされました。

 

森の図書室のオープンは6月中旬になる予定ですが、

応援してくださってる方々の期待に応えられるように、

力を尽くしたいと思っています。

 

次回の森の図書室 舞台の裏日記は、

開店直前の様子か、

オープニング当日の様子について書きたいと思っています。

次回もよろしければお付き合いください。

 

つづく。

渋谷に「夜の図書室」を作るにはどうすればいいのか。中の人たちの奮闘記。【森の図書室 舞台の裏日記#1】

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1ヶ月ほど前、1本の電話がありました。

 

「村越先輩、おりいって相談があります!」


「森くん??久しぶり。急にどうしたの?」

 

電話の主は、森俊介。彼は高校時代、もっとも仲が良かった後輩です。

卒業してからも、ちょくちょく交流はあったものの、

電話で会話するのはかなり久しぶりでした。

せっかく久しぶりに連絡をもらったのに電話で済ますのもなんなので、

近所のカフェでかるくお茶でもするか、ということになりました。

 

森「実は、渋谷に図書室を作るのを手伝ってほしいんです!」


村「図書室??」

 

森「はい!渋谷にみんなが自由に本が借りれて、

  お酒が飲める場所があったら絶対便利で

  楽しいと思うんですよね!

  なにより自分が行きたいし!!」

 ↓図書室の一角をモックにしたもの。実際のスペースは70畳。

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この言葉を聞いた瞬間、2つのことが頭に浮かびました。

1つは、「なんて夢いっぱいなプロジェクトだろう!!」ということ。

もう1つは、「これ、果たして食っていけるのだろうか??」ということ。

 

この図書室の主な収益源は飲食代や席代になるとのこと。

食事といっても、軽食のみとなるので、

ひらたくいうと、「本が借りれるバー」ということになります。

 

バーというのは、1人で小スペースでまわす分には比較的利益が出しやすい、

という話を聞いたことがありました。

お酒も食べ物も保存が効きやすいものが多いし、

ケータリングサービスなどと連携すれば、

廃棄率を通常の飲食店よりもかなり抑えることができるらしいのです。

 

しかし、それはあくまで小スペースでの話。

かたやこっちは、渋谷の1等地のうえに、70畳という規模の図書室。

オープン時からかなりのお客がついていなければ、

あっというまに資金が底を着いてしまうのではないだろうか。

 

ITベンチャーなら、参入、撤退、ピボットなどはよく行われるし、

深手を負わないように進めることもできます。

一方、リアル店舗がそこに抱えるリスクはかなり大きい。

彼は出店するだけで、自己資金のほとんどを失ってしまうのですから。

 

そんな危険な勝負に打って出ようとしている後輩を、

いいじゃん!やれやれ!などと軽々しくあおって良いものだろうか。 

 

そんな期待と不安が入り交じっている僕をよそに、

森くんのほっそい目の奥はキラキラ輝いていました。

 

アートディレクターという職業柄、

いろんな起業家と会うことが多いのですが、

森くんの目と話には彼らと同じ、

どんな困難があっても、絶対やり遂げる。

という強い意志がこもっているのがひしひしと伝わってきました。

 

そんな調子で、数時間に及ぶ暑苦しい打ち合わせに突入。

森くんの熱意に突き動かされたのか、ただ乗せられただけなのか、

結局僕も「よっしゃ!みんなが見たことないような、超素敵な図書室にしてやろうぜ!」

などと息巻いて、「森の図書室」プロジェクトはスタートしたのでした。

 

しかし、僕らやる気とは裏腹に、問題は山積みでした。

とりわけ重要視していたのは、

オープンまでに、いかに多くの人たちに森の図書室のことを知ってもらえるか、

ということ。

アートディレクターとして、ただビジュアルを作るのではなく、

バイラルする仕組みや導線をどうデザインするのか。ということ。

それが成功しなければ、プロジェクトの船出は、

困難なものになるであろうことは容易に想像がついていました。

 

しかし、この課題は、ある方法によって急激にバズりはじめ、

僕らの想像を大きく超える形で解決の兆しを見せていったのです。

 
長くなってしまったので、

その方法については来週あたりまた詳しく書かせていただこうと思います。

よろしければ、次回もおつきあいください。

 

つづく。


ティザーサイト公開中↓
http://morinotosyoshitsu.com/

世界初、話せる二次元アイドルの考察とそのデザイン 後編

ひょんなことから萌え萌えのアニメ番組のロゴを

依頼されることになった私。

 

萌え市場のトレンドを探るために独自にリサーチした結果、

以下の要素をロゴに入れることが、

萌え界でのメジャー感生成に必要なのだと結論付けました。

 

1.文字をまるくて、かつ太くする。

2.★や♥、シャドウやグラデなどの装飾的要素を入れる。

3.メジャーなフォントは使わない。

4.文字間を重なるくらいに詰める。

5.ピンクか暖色を入れてみる。

 

詳しくは、

普通のデザイナーが萌え萌えのロゴを真剣に作ってみた。前編 

をご覧下さい。

 

で、完成したビジュアルがこちら。

 

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問題なく萌えた。と、思いますw。

依頼主も納得の萌え感。ほっと一安心。

 こうして、世界初の話せる二次元アイドル「こちむす」こと、

「こちら娘島高等学校ほーそお部」のタイトルが完成したのでした。

 

今回はこの「こちむす」についても少しご紹介したいと思います。

 

 

世界初、話せる2次元アイドルのデビュー

 

株式会社MUGENUPが制作した「こちむす」。

彼女たちがデビューした先は、

DeNAが運営するアイドル特化のイブキャスティングサービス

「SHOW ROOM」というプラットフォーム。

 

ここではアイドルたちが生放送でユーザーのコメントを拾ってくれたり、

「ギフト」と呼ばれるアイテムをステージ上に投げ込んだりできます。

つまり、アイドルとリアルタイムでコミュニケーションができるサービス。

それがSHOW ROOMです。

https://www.showroom-live.com/

 

今のところ、このサービス内には生身のアイドルたちの番組が軒を連ねているのですが、ここに二次元のアイドルユニットをデビューさせるという

なんとも破天荒な企画が、この「こちむす」でした。

 

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初回の「こちむす」放送の様子。 

 

いったいこれの何が新しいかというと、彼女たちは、

「リアルタイムに会話できる初の2次元アイドル」なのです。

 

モーションキャプチャの技術を応用し、

声優さん達のジェスチャーや口の動き・顔の表情までを、

アニメキャラがリアルタイムで再現。

しかも、それをネットで生放送して、ユーザーとコミュニケーションを

とることが可能になりました。

 

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 声優の動き、顔の表情をリアルタイムで二次元キャラに反映。

 

第一回の放送では2000人を超える観客が彼女たちの放送にアクセスし、

非常に良いスタートを切ったようです。 

 

まとめ

 

まだまだ実験段階の要素も多いかと思いますが、

この試みが確実に動画コンテンツの新しい領域を拡張したと感じています。

 

こういった双方向動画の技術は

割とアイドルやゲームといったような、

娯楽性の強い業界で意欲的に開発されているように見えます。

おそらく、このような業界のほうがマネタイズ方法も確立されているので、

参入も実験もスムーズに行えるからかもしれません。

 

今はまだ萌え萌え番組ですが、エンタメ畑で有用性や精度が実証されていくと、

それが医療や教育などの導入に少し慎重になってしまいそうな業種にも

徐々に普及していくという流れをたびたび見かけます。

 

いずれ、この萌え萌え番組のおかげで、

自宅にいながら治療や診断を受けられたり、

世界中の好きな授業をどこでも受けられる、

といった未来が待っているかもしれませんね。

 

 

ちなみに、「こちむす」は

毎週月曜日の21時から引き続き

SHOW ROOMにて放送とのことです。

先週見逃した方は、次週「話せるアニメアイドル」を

体験してみてはいかがでしょう。

誰でも萌えロゴが作れるようになる5つのポイント【前編】

 

 


「萌え萌えのロゴ作ってくれませんか?」

 
「えっ?」
 
 
とあるベンチャー企業から、そんな依頼が突如舞い込んできました。

今度ローンチするアニメ番組のロゴが欲しい、とのこと。

 

萌え萌えのロゴというものは作ったことがありませんし、

特にその手のデザインが得意というわけでもありません。

できればオシャレなカフェのロゴなどを作って暮らしたいという

淡い希望をもって生きています。

なので、若干の不安はあったものの、

その依頼主とは長い付き合いということもあり、

「いいっすよ!」と、すぐ引き受けることになりました。

 

そんなわけで、今回は「普通のデザイナー」が、

萌えを学び、萌えを表現するまでの悪戦苦闘を記録していきます。

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萌えシズルを探せ

 

まずは、萌えるロゴの定義を頭にインストールしなければなりません。

そもそも、人間は、かわいい女子のキャラに萌えているのであって、

文字やロゴにが萌えたりするものでしょうか。

 

しかし、例えば、

居酒屋にいくと看板が墨文字で書かれていたりして、食べ物を見た訳でもないのに、

それがなぜか美味しそうに見ることがあります。

いわゆる、「シズル効果」の一種です。

 

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「シズル」というとビールがしゅわ~っとなったり、

肉がじゅ~っとなったり、そういうことをイメージするかもしれません。

が、さきほどの居酒屋の事例にもあったように、

文字にはデザインの力を使って、「美味しそう」という「シズル」を

付加することができるのです。

 

同様に、「萌えのシズル」というものをきちんと理解し、

それを文字に付加することができれば「萌えるロゴ」を作ることが

理屈上はできる、ということになります。

 

なので、まずは文字における「萌えシズル」の正体を解明すべく、

日本中が萌えたであろうメジャーなアニメ番組のロゴを

比較検証してみるところから始めました。

 

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「いやいや、これ萌えアニメじゃないから」とか、

萌えアニメにあのタイトル選ばないなんてカス」

などのご指摘はご勘弁ください。

一応、萌えアニメのランキングを検索し、

その上位から選んできたものです。

 

集めてみて思ったことは、想像以上に、「萌えにとっての王道」

という方向性がかなりハッキリと存在する、ということです。

傾向としては以下のものが上げられます。

 

 

1.文字がまるい。かつ太い。

基本的にはボールドな丸ゴシック体が中心。

目に飛び込んでくるスピードがかなり早い。

TVだと数秒しか表示されないからでしょうか。

 

2.装飾的である。

ロゴのセオリーで考えると、基本的には引き算でデザインをします。

なので、星や雪などを散りばめる表現は、この世界ならではの特徴です。

グラデーションやドロップシャドウ、立体表現が多用されるのも装飾の一種です。

 

3.メジャーなフォントを使わない

モリサワなどの、デザインの定番フォントをベースに使った形跡はありません。

フリーフォントか、ゼロから作字しているものが多い印象。

メジャー感のある文字を使わないことが、

アニメにとってのメジャーなのかもしれません。

 

4.文字間が狭い。

文字と文字が接するか、あるいは重なるくらい、ギッシリと組んでいます。

CIやVIに使われるようなロゴにはこういった組み方はあまりみられません。

  

5.だいたいピンク。

とにかくピンク。ピンクが多い。

もしくは暖色系が頻繁に使われる傾向にあります。

 

 

といった感じで、一般的なグラフィックデザインの論法とは

異なる表現が多く見られる結果となりました。

しかし、これらの傾向をうまくロゴに入れ込めれば、

「萌えのシズル」を生み出すことができるはず。

では実際に萌えロゴ制作のプロセスをご紹介!

と言いたいところですが、今回はだいぶ長くなってしまったので、

そこについては来週をめどに、「後編」でまとめていきたいと思います。

 

 よろしければ、次回もお付き合いください。

Gunosyの大幅リニューアルやCM展開について、広告屋のデザイナーが考察してみた。

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を騒がせている、ニュースアプリGunosy

大幅UI改訂につづく、ウルトラマンを起用したTVCM展開。

今回は広告を生業にしているデザイナーという目線から、

このリニューアルを考察してみました。

 

 

 ニッチからメジャーへ。

 

今回の一連のリニューアルのデザインと、広告クリエイティブからわかることは、

アーリーアダプターをコアターゲットにしたニッチメディアから、

オールターゲットのメジャーなメディアに生まれ変わる

という意思が徹底して反映されているということです。

CMを打つという決断はもちろん、プロダクトのUI、ロゴのデザインにいたるまで、

すべてに一貫して表現されています。

 

平たくいうと、

ネット周りのマニアックなユーザーだけでなく、

スマホ買いたてのお母さんとかお父さんとか、

一般市民もぜ〜んぶ狙っちゃうぞ!

というスタンスに変わったということです。

 

どの辺がそうなのか、TVCM、ロゴ、UIを例にまとめてみました。

 

広いターゲットを意識したTVCM

今回公開されたCMは2本。

プレゼン直前のサラリーマンを描いた「プレゼン編」と

面接直前の就活生を描いた「面接編」

どちらも「3分」で読めるというキーワードで

ウルトラマンと引っ掛けているといったCMです。

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グノシー ウルトラマンCM 「面接編」 - YouTube

 

 TVCMを打つという選択をしている時点で、

アーリーアダプターとその周りのユーザーではなく、

ネット民ではない潜在的なユーザーをとりにいっていることは明白です。

さらにウルトラマン(1966年〜)という

かなり上の年齢層までアプローチすることができる

キャラクターを起用している点を見ると

他社のアプリのCMと比べて、

けっこうターゲットを広めに設定しているのではないでしょうか。

(20〜50代くらいの男女?コアターゲットは20代〜30代?)

 

マンガボックスが金田一少年進撃の巨人を使ったTVCMで

大成功したのは記憶に新しいですが、

あのCMよりもだいぶ広範囲のターゲットを狙っている印象です。

 

 

 

メジャー路線へのロゴデザインの改訂

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前のロゴは一言でいうと「ストイック」

書体は断定することはできませんでしたが、Minionなどの、

いわゆる古典的なオールドスタイルの書体を少しいじって作ったものだと思われます。

カラーも白黒オンリーというストイックさ。なので、前のロゴはWEBサービスでありながら、紙媒体のような硬派さやニッチさがあるロゴでした。

(僕はこの硬派さが逆に好きでしたが。)

 

今のロゴは一言でいうと「大衆的」

赤と青という補色に近い配色にすることで明るく開けた印象がするし、

紙飛行機というカジュアルなモチーフを持ってきているのも、

広範囲のライトユーザーを意識している感じがします。

また、表記をGunosyからグノシーに変えているのも、

英文字表記のクールなたたずまいよりも、

誰にでも伝わる大衆性を優先した結果と思われます。

 

 

全方位型メディアを意識したUI変更

 

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UIについてはもうすでにたくさんの方が賛否両論を書かれていると思いますが、

従来のパーソナライズされた情報を発信するためものから、

スマートニュースを強烈に意識した全方位型のメディア、UIに変更。

こちらもより広いユーザーに向けた、徹底したメジャー路線です。

 

 

 まとめ

これらのTVCM、ロゴ、UIのクリエイティブから、

オールターゲット、オールジャンルに振り切った

戦略だということが強く伝わってきます。

ニュースアプリとしてより多くのユーザーを獲得していくためには、

この流れは必然のようにも思えますが、

これだけ広範囲のターゲットにリーチしようとすると、

その分一人あたりの効果も薄まってしまうので、

結果として多くの広告出稿量が必要になるのではないかと思います。

 

12億もの大規模なファイナンスをしたGunosyですが、

広範囲の広告出稿を続けるのはさすがにしんどいはず。

単発のCMで一気にネット外のユーザーの認知を獲得して、

そのあとはグロースハック的に拡大していくという戦略でしょうか。

 今回のCMでどれだけ潜在ユーザーを獲得できたかで、

このリニューアルの明暗が大きく分かれるように感じました。

 

好きだったジャズミュージシャンが

J-POPに転向しちゃったみたいでちょっぴり寂しいですが、 

とはいえ、僕もGunosy愛用者の一人。

これからもぜひ頑張って欲しいという思いです。

今後の動きがとても楽しみです!